くず歯医者の恋愛経済入門4 友達にお金を貸してみよう
2月24日のエントリー『「ずっとキミを愛してる」は信用できるのか』で、「5年後100万円返すからお金を貸してくれ」と言ってきた友達に対してあなたが貸せる金額は約95万円である、という話をしました。そしてこの話には、5年後確実に100万円は返却されるという前提条件がついていましたね。
しかし、あなたの友達が全員、このように誠実な人たちとは限りません。
ここで仮に、借り入れを頼んできた友達が50%の確率で5年後に100万円を持ち逃げするとします。そのくらいの信用の人を一人、頭の中に思い浮かべながら話を進めましょう。
あなたにとっては無視できないリスクとなりますね。この条件下ではどのように考えばよいのでしょう。
まずは前回学習した期待値を使って、5年後に100万円を50%の確率で持ち逃げされる場合の期待値を算出すると
0円×0.5+100万円×0.5=50万
となります。
さて困りました。なぜならあなたは5年後に100万円を期待しているからです。期待値50万では割にあいません。当たり前ですね。
期待値を100万円にするためには、この友達からいくらの返却を期待しなければいけないでしょうか。期待値の式にあてはめれば簡単です。ここでの期待値をK円とします。すると
0円×0.5+K円×0.5=100万
となり
K=200万
が成り立ちます。
つまりこの友達に200万円を期待しなければいけません。
ここで思い出してみましょう。100%返却が保証されている場合、あなたが貸せる金額は95万円でした。では、この95万円が今算出した200万円になるために利回りはどのくらい必要でしょうか。
今一度「現在価値」の考え方のエントリー で説明したこの式を用います。
n年後の将来価値=現在価値 ×(1+ 利回り)^n
あてはめると
200万 = 95万 × ( 1 + 利回り)^5
となり
(利回り)=0.16
が成り立ちます。
つまり16%です。
95万円を16%の利回りで運用すると200万円になるということです。
さて、この16%の利回りで5年後100万円にするためにはいくらの元手が必要でしょうか。また同じ式にあてはめるだけですね。
n年後の将来価値=現在価値 ×(1+ 利回り)^n
100万 = 現在価値 × (1 + 0.16 )^5
(現在価値)= 47.5万円
やっと出ました。
「5年後100万円返すからお金貸してくれ」と言ってきた友達に対して、「こいつは半分くらいの確率で持ち逃げするだろうな」とあなたが頭に思い浮かべた友達に貸せる金額は、47.5万円ということになります。リスク0で貸せる金額95万円のちょうど半分ということを表しています。
最後に今日の大切なポイントです。
今日計算した「今の47.5万円を16%の利回りで5年間運用すると100万円になる」
という表現は
「5年後の100万円を利回り16%で割り引くと今の47.5万円になる」
と言い換えることができます。
ここでの「16%」を「ディスカウントレート」と呼びます。
日本国債のような安全資産のディスカウントレートが1%で、今回の友達のディスカウントレートが16%ということです。
そして「ディスカウントレートの差」が「リスクの差」ということになります。あなたの思い浮かべた友達は日本国債に比べて(16-1)%、つまり15%ほどリスクが高いと、あなたは思っているのです。
まぁ、この友達があなたにとって本当に友達と呼べるかどうかは全く別の話ですが。